医療への取り組み
長時間透析
近年では透析膜の性能が向上し、血液中の尿毒素を比較的短時間で除去することができるようになりました。昔は1回5、6時間が当たり前であった透析時間が4時間前後になっているのは、このためです。しかし尿毒素はからだ中の細胞にも蓄積しているため、これが血液中に浸み出してくるのには意外と時間がかかるものです。ですから透析で血液中の尿毒素は短時間に除去できるとしても、より多くの尿毒素をからだのすみずみから取り除くためには相応の時間をかける必要があります。また、ゆっくりと体内の余剰水分を除水することで、心臓への負担を軽減することもできます。欧米では1回8時間といった長時間透析も試みられており、患者様の寿命を大きく延ばしたことが報告されています。さすがに8時間は無理にしても、少しでも透析時間を延ばして元気に長生きして頂きたい、これが私たちの理念です。当院では1回5~6時間の長時間透析にも取り組んでいます。長時間透析を行うことで、
- 食事制限を緩和できる
- 栄養状態、免疫状態を改善し、感染症に強いからだを作る
- より多くのアミロイドを除去できるため、骨痛、関節痛が軽減する
- 皮膚の掻痒感を軽減する
- 貧血を改善する
- 動脈硬化を軽減し、心筋梗塞、脳卒中といった血管合併症を予防する
といった効果が報告されています。興味を持たれた方は、お問い合わせ下さい。
バスキュラー・アクセス手術
血液透析を続けるためには、透析のために血液を体外へ取り出し、そして浄化された血液を体内に戻すルート(バスキュラー・アクセス)が必要になります。現在、最も標準的で優れたバスキュラー・アクセスは内シャントです。これは腕の動脈と静脈を継ぎ合わせることにより、腕の表在静脈に多くの血液を流し、透析時に針を刺してバスキュラー・アクセスとして使用できるようにするものです。また患者様によっては人工血管グラフト留置や動脈表在化といった方法を採ることもあります。いずれも手術が必要となりますが、当院では院内手術室でバスキュラー・アクセス造設手術を行うことができます(手術室の写真)。外来(日帰り)手術として行い、院長または副院長が執刀しますので、術後もアクセスとして使用できるようになるまで一貫して管理致します。
患者様によりましては腕の表在静脈が非常に細く、アクセス手術が極めて困難な場合もあります。この場合は、関連施設であります梶本クリニック分院(堺市中百舌鳥)でデジタル・サブトラクション血管造影(DSA)等を施行し、血管走行を確認した上で手術を施行することもあります。検査・手術当日には御足労を頂くこともありますが、バスキュラー・アクセスは透析患者様の命綱であり、より確実なアクセス手術を施行するように努めています。
感染症対策
透析医療では日常的に血液を取り扱うこと、また透析患者様は免疫力が低下していることから、透析室は医療施設の中でも院内感染が発生しやすい場所と考えられています。当院では院長を筆頭とする感染対策委員会が中心となり、細心の注意を払って感染予防に努めています。その一部を御紹介しますと、
独自の院内感染対策マニュアル作製
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のガイドライン、および厚生労働科学研究費事業による「標準的な透析操作と院内感染予防に関するマニュアル」に準拠して当院独自の感染対策マニュアルを作製しています。
たとえば透析開始時に針を刺す時と透析終了時に針を抜く時には、血液が飛散するリスクが最も高くなります。このため担当するスタッフには手袋、ビニールエプロン、マスク、ゴーグルの着用を義務付けています。
このうちゴーグル以外は使い捨てとして随時交換することにより、職員を介した感染の予防を図っています。
あるいは消毒薬、消毒綿球、ガーゼ、穿刺部保護用のフィルムは全て1回分ずつ単包化したものを使用しています。物品棚より患者様毎に必要分を取り出し、使用しなかった場合は未開封であっても物品棚に戻さずに廃棄しています。また絆創膏、駆血帯、手枕等は当院より各患者様に個人用としてお渡ししており、他の患者様と共用することはありません。このように物品を介した院内感染の予防にも配慮をしています。
感染症ベッドの配置
B型肝炎ウイルス抗原陽性の(B型肝炎に感染している)患者様については、他の患者様への万一の血液飛散のリスクを避けるため、感染症スペース内での透析をお願いしています。
このスペースは患者様の疎外感を無くすために透明のアクリル板で周囲と仕切られています。またC型肝炎抗体陽性の患者様にも感染症ゾーン内のベッドを使用して頂いております。またインフルエンザが発症した際には、感染症ゾーン内の孤立したベッドをスライド・スクリーンで囲んだ半個室状態にして使用しています。スタッフ配置は日毎に調整され、感染症ベッドを担当するスタッフは出来る限り非感染症ゾーンの患者様と接触しないように配慮されています。
予防接種の推奨
インフルエンザ・ワクチンはもちろんのこと、高齢の患者様には肺炎球菌ワクチンの予防接種を積極的にお勧めしています。
透析機器について
透析液の原料は人工腎臓透析用剤(粉末)と水道水ですが、水道水には様々なイオン、重金属、汚染物質、消毒剤など透析液に不都合な物質が含まれています。そこで軟水化装置、活性炭フィルター、逆浸透装置といった機器を用いて、まずは水道水を透析液に適した水(RO水)に精製します。さらに2種類の粉末状人工腎臓透析用剤を溶解し、RO水と適切な割合で混合すれば透析液が出来上がります。これらの過程を、当院では国内最大シェアを持つ日機装社製の全自動機器を導入して、衛生的に処理しています。
1人の患者様に4時間の透析を行うためには毎回120リットルの透析液が必要です。月水金曜日には100人前後の患者様が来院されますので、1日に必要な透析液の総量は10トン以上にもなります。患者様の目に触れることはありませんが、機械室には大掛かりな透析液供給装置が並んでおり、臨床工学技士がメインテナンスに目を光らせています。
また透析室のベッドサイド・コンソールでは、透析液流量、温度、静脈圧、除水量などをモニターし調節しています。より安全で確実な透析治療を提供するために、当院では2009年6月に全てのコンソールを日機装社製の最新型コンソールに更新しました。
また一部のベッドサイド・コンソールには、コンソール内で透析液の調合を行う機能が付随しております(個人用透析装置)。このコンソールを用いれば、高ナトリウム透析(血圧低下予防)、低カルシウム透析(ビタミンDパルス療法中の高カルシウム予防)などの処方透析や、最近開発された無酢酸透析液(カーボスター)を用いて酢酸不耐性の患者様に対応することも可能です。さらに透析液供給装置にはもちろんのこと、全てのベッドサイド・コンソールにもエンドトキシン捕捉フィルターを装着して透析液の浄化を図っています。
吸着療法
血液透析と同様に血液を体外に取り出し、血中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を取り除いた上で体内に戻す治療です。具体的にはリポソーバーという多孔質セルロースビーズを詰めた筒状の器具(カラム)に血液を流し、ビーズにLDLコレステロールを吸着させた上でカラムごと廃棄してしまいます。LDLアフェレーシスともいわれ、当院では主に高コレステロール血症が原因となって閉塞性動脈硬化症を来たし、下肢への血行が障害されている患者様に実施しています。また家族性高コレステロール血症や巣状糸球体硬化症の治療にも保険適応があります。
そのほか、潰瘍性大腸炎や慢性関節リウマチに対する白血球除去療法(G-CAP、L-CAP)といった吸着療法を行うこともできます。
血液透析濾過(ろか)
血液透析と同様に体外循環を行い、老廃物を含んだ血液の液体成分のみを除去し、代わりに精製された置換液を補充する治療法を血液濾過(ろか)と呼んでいます。この血液濾過を血液透析と同時に行うのが血液透析濾過(HDF)です。
この治療により、血液透析では除去し難い、比較的分子量の大きな老廃物まで取り除くことができます。透析困難症、透析アミロイド症、難治性貧血など通常の血液透析が上手くいかない患者様に適応となります。当院では血液透析濾過も可能なコンソールを導入しており、透析中の血圧低下が軽減する、皮膚掻痒感やイライラ感・不眠・関節痛・骨痛が改善するといった効果が期待されています。
フットケア
フットケア
近年、透析患者様のフットケアが注目されています。透析患者様の下肢には、
- 閉塞性動脈硬化症(ASO)、末梢動脈疾患(PAD)を併発しやすい
- 糖尿病や栄養不全のために免疫力が低下し、細菌感染を起こしやすい
- 尿毒素が蓄積して皮膚が弱く乾燥している
- 尿毒症や糖尿病で神経が障害され、知覚が鈍化している
といった特徴があります。ですから靴擦れや爪切で生じた小さな傷や魚の目、胼胝(タコ)といった、健常人であれば何でもない病変が驚くほど急激に重症化し、時には下肢切断に至ってしまうこともあります。下肢を切断すれば生活の質が大きく損なわれるのは当然ですが、現実はより深刻であり約半数の患者様が1年以内に死亡するといわれています。こういった最悪の事態を避けるためには、日頃から患者様が御自身の足に注意を払うことが大切です。しかし高齢患者様には視力が低下している方も多く、医療スタッフによるフットケアが重要視されるようになりました。当院では常勤医による定期的な下肢診察を漸次開始しています。また皮膚科外来を併設していますので、専門医の診察も受けやすくなっています。もちろん血管造影などの精査が必要であれば、積極的に近隣の高次医療施設に御紹介しています。要は早く見つけて放置しないことです。1本でも多くの足を切断から救済することを目指しています。
検査機器
X線撮影装置
透析療法を続けるためには、定期的な胸部X線撮影が必要になります。撮影時の放射線被爆量は僅かなものですが、生涯にわたる治療であることを考えれば出来る限り被曝量を減らすべきなのは当然です。当院ではインバーター方式X線発生装置を導入すると共に、コンピューターによるデジタル画像処理を行っています。これらの機器の組み合わることにより、旧来のX線撮影装置と比較して放射線被爆量を30~40%軽減することが可能となりました。
カラードップラー超音波画像診断装置
いわゆるエコー検査を行う機械です。定評のある東芝社製のNemio 30を導入しており、腹部(肝臓・膵臓・胆嚢・腎臓など)、心臓の他にも、頚部(甲状腺、副甲状腺)やシャント血管を観察することが出来ます。長期に透析療法を続けていると悪性腫瘍が発生しやすくなることが知られており、腹部エコー検査による早期発見が期待されています。また心臓エコー検査では心機能の評価や心臓弁膜症、血栓の有無を観察するのみならず、心房や下大静脈の大きさを測定してドライウェイト調整の参考にしています。エコーは検査に伴う痛みや身体への悪影響が全くない優れた検査方法であり、定期的に専門医を招いて行っています。
骨塩量測定装置(ボナライザー)
透析患者様では透析骨異栄養症のために骨塩量が減少することが少なくありません。当院では、Dual energy X-ray absorptiometry (DXA法)といって、異なる2つのエネルギーのX線を利用して前腕の骨密度を測定する骨塩量測定装置(ボナライザー)を導入し、すべての患者様に定期的に実施しています。
院内委員会活動
当院では全てのスタッフが、院内委員会活動(感染対策、事故対策、防災、接遇)に参加しています。日頃は各々の委員会毎に活動し、3ヶ月毎の合同会議で成果を報告しています。各委員会の活動内容を御紹介しますと、
感染対策委員会
感染対策委員会は診療に伴う院内感染の予防と施設内の衛生管理を目的として活動しています。たとえばアメリカ疾病予防管理センター(CDC)基準に準拠した当院独自の感染対策ガイドラインを作製し、特に入職者には重点的な研修を行って周知徹底を図っています。また患者様の休憩室やトイレに至るまで院内の衛生状態を監視し、清掃や消毒に対する提言を行っています。これらの活動内容は2ヵ月毎の定例会議で討議され、問題点の見直しを行うとともに、感染対策関連の研究会、公開セミナーには積極的に参加して最新情報の取得に努めています。
一方で患者様に対しても、正しい手洗い方法を御指導するといった試みも行っています。手洗い後も皮膚表面に残存する細菌に関する調査を行い、この結果を学会でも報告しました。
事故対策委員会
事故対策委員会は、より安全な透析医療を提供するためのリスクマネージメントを行っています。院内で発生したすべてのインシデントやアクシデントは収集ソフト「どっきり!ひやり」に掲載されますので、一覧として表示することができます。そして各事例について考えられる要因を列挙し、SHELL分析を行っています。これは多岐にわたる事故要因を、
- 形にならないソフトウェアの要因(Software)
- 形のあるハードウェアの要因(Hardware)
- 環境の要因(Environment)
- 当事者以外の関係者の要因(Liveware)
- 当事者の要因(Liveware)
に分類し、どこに問題があるかを見極めようとする手法です。毎月の定例会議には10件前後の事故事例が報告され、SHELL分析結果に基づいて改善策が協議されています。そして新たなマニュアルを作製して関連職員に周知徹底することにより、医療事故ゼロを目指しています。
防災委員会
防災委員会では火災や震災といった災害が発生した際に、被害を最小限に抑え、その後の透析医療を出来る限り円滑に継続させることを目的とした活動を行っています。
たとえば避難経路、避難器具、災害時持ち出し物品、緊急時連絡マニュアル等の整備・点検・更新を行います。最近では蓄光テープによる避難経路の表示や、歩行困難な患者様が座ったまま階段を避難できるEVAC CHAIRを導入しました。スタッフに対しては、「防災対策マニュアル」を作製して緊急時の対応を統一しています。また患者様にも、より平易な内容とした「防災の手引き」や、災害時に止むを得ず他院で透析を受けるために透析条件を記載した「人工透析カード」を配布しています。
ひとたび災害が発生すれば患者様の御協力も必要不可欠となります。そこでスタッフによる避難訓練以外にも、患者様にも御参加頂く避難訓練を毎年実施しています。また毎年2回、防災週間と防災ボランティア週間内に災害用伝言ダイヤルの練習も行っています。
今後ともハードウェアであるクリニック設備の充実、ソフトウェアであるスタッフの災害対応力の強化、そして患者様の災害に対する意識向上を三位一体とした防災対策に取り組んでいきます。
接遇委員会
接遇委員会では、より気持ちよく透析医療を受けて頂けますよう「マナーと気遣い」について話し合っています。また院内意見箱の設置はもちろんのことですが、1、2年毎には全ての患者様を対象に満足度アンケートを実施し、問題点の洗い出しを行っています。例えば「ベッドの書類棚にファイル類を出し入れする音が気になる」との御意見には、棚にスポンジを貼付するといった対応を行いました。また患者様体験と称して、スタッフが透析ベッドに実際に臥床する試みも実施しました。腕を固定された状態で4時間、透析中の患者様と並んで臥床することで、患者様目線から問題点を探ろうとするものです。
今後とも、何かお気付きの点がありましたら、お気軽にお声を掛けて下さい。
臨時透析
御旅行や御出張で大阪にいらしている間、当院での透析治療をお引き受けします。JR大阪環状線で大阪駅となりの福島駅から徒歩2分の便利な立地です。透析条件の確認が必要となりますので、必ず予め御連絡をお願いします。
連絡先06-6451-9010
(月水金:8:00~22:00、火木土:8:00~14:00)
保存期腎不全
腎機能が持続的に低下している慢性腎臓病(CKD)のうち、透析療法までは必要ない状態を保存期腎不全、透析療法が必要なまでに悪化した状態を末期腎不全と呼んで区別しています。当院には透析患者様(末期腎不全)のみならず、保存期腎不全の患者様も通院されています。初期の保存期腎不全ではさしたる症状はなく、適切な治療すれば大幅に腎不全の進行を遅らせることができます。具体的には、尿毒素吸着や浮腫・貧血・高血圧・高尿酸血症・代謝性アシドーシスに対する薬物治療、蛋白や塩分制限を中心とした食事療法、適度な運動制限などの生活指導を行っています。
しかし残念ながら今日の医学では、ある程度以上(概ね血清クレアチニン2mg/dl以上)に悪化した慢性腎臓病を治癒させることは不可能であす。ですから他の疾患で天寿を全うしない限り、いずれは末期腎不全となって透析療法が必要となることも事実です。私たちは、こういった患者様に最大限の保存期腎不全治療を行う一方で、透析療法への過剰な恐怖感を抱かれないような配慮を心掛けています。大勢の透析患者様のお世話をしていく中で、円滑な透析治療を行うためには透析導入前(保存期)から計画性のある社会的、精神的サポートが重要であること痛感しているのです。たとえば実際に透析室を見学して頂く、患者会活動を紹介する、導入後の家庭生活や仕事、余暇などについてより具体的な説明を行うなど、実際に透析を行っているクリニックとしての利点を最大限活用します。維持透析には必須となるバスキュラー・アクセス手術も院内で行い、身体障害者認定の申請手続きもお手伝いします。そして適切な透析導入時期を見極めて、出来る限り入院せずに当院で外来導入しています。もちろん他施設で透析導入された患者様も大歓迎ですが、導入前(保存期)の時点から安心して通院して頂けるクリニックを目指しています。








