医療への取り組み

感染症対策

透析医療では日常的に血液を取り扱うこと、また透析患者様は免疫力が低下していることから、透析室は医療施設の中でも院内感染が発生しやすい場所と考えられています。当院では院長を筆頭とする感染対策委員会が中心となり、細心の注意を払って感染予防に努めています。その一部を御紹介します。

独自の院内感染対策マニュアル作成

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のガイドライン、および厚生労働科学研究費事業による「標準的な透析操作と院内感染予防に関するマニュアル」に準拠して当院独自の感染対策マニュアルを作製しています。

感染症ベッドの配置

B型肝炎ウイルス抗原陽性の(B型肝炎に感染している)患者様については、他の患者様への万一の血液飛散のリスクを避けるため、感染症スペース内での透析をお願いしています。このスペースは患者様の疎外感を無くすために透明のアクリル板で周囲と仕切られています。またC型肝炎抗体陽性の患者様にも感染症ゾーン内のベッドを使用して頂いております。またインフルエンザが発症した際には、感染症ゾーン内の孤立したベッドをスライド・スクリーンで囲んだ半個室状態にして使用しています。スタッフ配置は日毎に調整され、感染症ベッドを担当するスタッフは原則的に非感染症ゾーンの患者様と接触しないように配慮されています。

手袋、マスク、ゴーグル、ビニールエプロンの着用

たとえば透析開始時に針を刺す時と透析終了時に針を抜く時には、血液が飛散するリスクが最も高くなります。このため担当するスタッフには手袋、ビニールエプロン、マスク、ゴーグルの着用を義務付けています。 このうちゴーグル以外は使い捨てとして随時交換することにより、職員を介した感染の予防を図っています。 あるいは消毒薬、消毒綿球、ガーゼ、穿刺部保護用のフィルムは全て1回分ずつ単包化したものを使用しています。物品棚より患者様毎に必要分を取り出し、使用しなかった場合は未開封であっても物品棚に戻さずに廃棄しています。また絆創膏、駆血帯、手枕等は当院より各患者様に個人用としてお渡ししており、他の患者様と共用することはありません。このように物品を介した院内感染の予防にも配慮をしています。

透析機器について

透析液の原料は人工腎臓透析用剤(粉末)と水道水ですが、水道水には様々なイオン、重金属、汚染物質、消毒剤など透析液に不都合な物質が含まれています。そこで軟水化装置、活性炭フィルター、逆浸透装置といった機器を用いて、まずは水道水を透析液に適した水(RO水)に精製します。さらに2種類の粉末状人工腎臓透析用剤を溶解し、RO水と適切な割合で混合すれば透析液が出来上がります。これらの過程を、当院では国内最大シェアを持つ日機装社製の全自動機器を導入して、衛生的に処理しています。
1人の患者様に4時間の透析を行うためには毎回120リットルの透析液が必要です。月水金曜日には100人前後の患者様が来院されますので、1日に必要な透析液の総量は10トン以上にもなります。患者様の目に触れることはありませんが、機械室には大掛かりな透析液供給装置が並んでおり、臨床工学技士がメインテナンスに目を光らせています。 また透析室のベッドサイド・コンソールでは、透析液流量、温度、静脈圧、除水量などをモニターし調節しています。より安全で確実な透析治療を提供するために、当院では2009年6月に全てのコンソールを日機装社製の最新型コンソールに更新しました。
また一部のベッドサイド・コンソールには、コンソール内で透析液の調合を行う機能が付随しております(個人用透析装置)。このコンソールを用いれば、高ナトリウム透析(血圧低下予防)、低カルシウム透析(ビタミンDパルス療法中の高カルシウム予防)などの処方透析や、最近開発された無酢酸透析液(カーボスター)を用いて酢酸不耐性の患者様に対応することも可能です。さらに透析液供給装置にはもちろんのこと、全てのベッドサイド・コンソールにもエンドトキシン捕捉フィルターを装着して透析液の浄化を図っています。

オンラインHDF

一般的な血液透析(HD)に血液ろ過(HF)を組み合わせた血液浄化法が血液ろ過透析(HDF)です。なかでも無菌化した透析液を置換液として使用する方法をオンラインHDFと呼んでいます。血液透析では除去しにくかった低中分子量蛋白を効率よく取り除くことが出来るため、透析中の血圧が安定する、関節痛・イライラ感・不眠・むずむず脚症候群・皮膚掻痒感(かゆみ)といった症状が改善される、透析アミロイドーシスの予防効果が期待できるといったメリットが報告されています。
いっぽうで透析液を置換液として血液内に入れることになるため、非常に厳重な水質管理が要求されます。当院の透析液は以前より日本透析医学会の定める透析液水質管理基準をクリア―しており、オンラインHDFの導入後は更にチェック頻度を増やして厳重な管理を行っています。現在、一部のベッドでオンラインHDFが可能となっておりますので御興味のある方はお問い合わせ下さい。

フットケア

近年、透析患者様のフットケアの重要性が注目されています。透析患者様の下肢には、

1閉塞性動脈硬化症(ASO)、末梢動脈疾患(PAD)を併発しやすい

2糖尿病や栄養不全のために免疫力が低下し、細菌感染を起こしやすい

3尿毒素が蓄積して皮膚が弱く乾燥している

4尿毒症や糖尿病で神経が障害され、知覚が鈍化している

といった特徴があります。ですから靴擦れや爪切で生じた小さな傷や魚の目、胼胝(タコ)といった、健常人であれば何でもない病変が驚くほど急激に重症化し、時には下肢切断に至ってしまうこともあります。下肢を切断すれば生活の質が大きく損なわれるのは当然ですが、現実はより深刻であり約半数の患者様が1年以内に死亡するといわれています。
こういった最悪の事態を避けるためには、日頃から患者様が御自身の足に注意を払うことが大切です。しかし高齢患者様には視力が低下している方も多く、医療スタッフによるフットケアが重要視されるようになりました。
当クリニックでは医師・スタッフによる定期的な下肢診察を実施しています。また下肢に血行障害を来たす閉塞性動脈硬化症の指標である下肢・上腕血圧比(ABI)や脈波伝播速度(PWV)の測定を、全ての透析患者様について定期的に実施してます。さらに皮膚科専門医が積極的にフットケア診療に参加しています。もちろん血管造影などの精査が必要であれば、積極的に近隣の高次医療施設に御紹介しています。要は早く見つけて放置しないことです。1本でも多くの足を切断から救済することを目指しています。

保存期腎不全(CKD)

腎機能が持続的に低下している慢性腎臓病(CKD)のうち、透析療法までは必要ない状態を保存期腎不全、透析療法が必要なまで悪化した状態を末期腎不全と呼んで区別しています。当クリニックには透析を必要とする末期腎不全の患者様ばかりでなく、保存期腎不全の患者様も通院されています。初期の保存期腎不全では目立った症状もなく、適切に治療すれば腎不全の進行を大幅に遅らせることができます。具体的には、尿毒素吸着や浮腫・貧血・高血圧・高尿酸血症・代謝性アシドーシスに対する薬物治療、蛋白や塩分制限を中心とした食事療法、適度な運動制限などの生活指導を行っています。
しかし残念ながら今日の医学では、ある程度以上(概ね血清クレアチニン>2mg/dl)以上に悪化した慢性腎臓病を完全に治癒させることは不可能であり、いつかは末期腎不全となって透析療法が必要となります。私たちは、こういった患者さまに対して最大限の保存期腎不全治療を行う一方で、透析療法への過剰な恐怖を抱かれないような配慮を心がけております。大勢の透析患者様とお付き合いをした経験から、円滑な透析療法を実施するためには透析導入前(保存期)からの計画性のある社会的・精神的サポートが重要であることを痛感しているからです。たとえば実際に透析室を見学して頂く、患者会活動を御紹介する、透析を始められてからの家庭生活や仕事・余暇などについてより具体的に御説明するなど、実際に透析を行っているクリニックとしての利点を最大限に活用します。
いよいよ透析導入となりました折には必須となるバスキュラー・アクセス手術も院内で行い、身体障害者認定の申請手続きもお手伝いします。そして患者様ごとに適切な透析開始時期を見極め、できる限り入院することなく当院で外来導入することを原則としています。もちろん他施設で透析導入された患者様も大歓迎ですが、導入前(保存期)からも安心して通院して頂けるクリニックです。

院内委員会活動

当クリニックでは透析室に勤務する全てのスタッフが、院内委員会活動(感染対策、事故対策、防災、接遇)に参加しています。日頃は各々の委員会毎に活動し、定期的に合同会議で成果を報告しています。各委員会の活動内容を御紹介しますと、

感染対策委員会

感染対策委員会は診療に伴う院内感染の予防と施設内の衛生管理を目的として活動しています。たとえばアメリカ疾病予防管理センター(CDC)基準に準拠した当院独自の感染対策ガイドラインを作製し、特に入職者には重点的な研修を行って周知徹底を図っています。また患者様の休憩室やトイレに至るまで院内の衛生状態を監視し、清掃や消毒に対する提言を行っています。これらの活動内容は2ヵ月毎の定例会議で討議され、問題点の見直しを行うとともに、感染対策関連の研究会、公開セミナーには積極的に参加して最新情報の取得に努めています。
一方で患者様に対しても、正しい手洗い方法を御指導するといった試みも行っています。手洗い後も皮膚表面に残存する細菌に関する調査を行い、この結果を学会でも報告しました。

事故対策委員会

事故対策委員会は、より安全な透析医療を提供するためのリスクマネージメントを行っています。院内で発生したすべてのインシデントやアクシデントは収集ソフト「どっきり!ひやり」に掲載されますので、一覧として表示することができます。そして各事例について考えられる要因を列挙し、SHELL分析を行っています。これは多岐にわたる事故要因を、

1形にならないソフトウェアの要因(Software)

2形のあるハードウェアの要因(Hardware)

3環境の要因(Environment)

4当事者以外の関係者の要因(Liveware)

5当事者の要因(Liveware)

に分類し、どこに問題があるかを見極めようとする手法です。毎月の定例会議には事故報告が提出され、SHELL分析結果に基づいて改善策が協議されています。ヒトは必ずミスを犯す、機械はいつかは必ず故障するという前提に立って、これらを非難するのではなく、大きな事故につなげないためのシステム作りを目標としています。

防災委員会

防災委員会では火災や震災といった災害が発生した際に、被害を最小限に抑え、その後の透析医療を出来る限り円滑に継続させることを目的とした活動を行っています。
たとえば避難経路、避難器具、災害時持ち出し物品、緊急時連絡マニュアル等の整備・点検・更新を行います。最近では蓄光テープによる避難経路の表示や、歩行困難な患者様が座ったまま階段を避難できるEVAC CHAIRを導入しました。スタッフに対しては、「防災対策マニュアル」を作製して緊急時の対応を統一しています。また患者様にも、より平易な内容とした「防災の手引き」や、災害時に止むを得ず他院で透析を受けるために透析条件を記載した「人工透析カード」を配布しています。
ひとたび災害が発生すれば患者様の御協力も必要不可欠となります。そこでスタッフによる避難訓練以外にも、患者様にも御参加頂く避難訓練を毎年実施しています。また毎年2回、防災週間と防災ボランティア週間内に災害用伝言ダイヤルの練習も行っています。
今後ともハードウェアであるクリニック設備の充実、ソフトウェアであるスタッフの災害対応力の強化、そして患者様の災害に対する意識向上を三位一体とした防災対策に取り組んでいきます。

接遇委員会

接遇委員会では、より気持ちよく透析医療を受けて頂けますよう「マナーと気遣い」について話し合っています。また院内意見箱の設置はもちろんのことですが、1、2年毎には全ての患者様を対象に満足度アンケートを実施し、問題点の洗い出しを行っています。例えば「ベッドの書類棚にファイル類を出し入れする音が気になる」との御意見には、棚にスポンジを貼付するといった対応を行いました。また患者様体験と称して、スタッフが透析ベッドに実際に臥床する試みも実施しました。腕を固定された状態で4時間、透析中の患者様と並んで臥床することで、患者様目線から問題点を探ろうとするものです。
今後とも、何かお気付きの点がありましたら、お気軽にお声を掛けて下さい。

梶本クリニック TEL06-6451-9010 お問い合わせはこちら梶本クリニック TEL06-6451-9010 お問い合わせはこちら

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9月25日(月)の泌尿器科診療は都合により休診させて頂きます。
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